顧客インサイトとニーズの違いは?把握する3つの方法や注意点を紹介

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集客やマーケティングにおいて顧客に寄り添った施策を実施し、成果を出すためには顧客インサイトが重要です。
顧客インサイトとは「顧客自身も気づいていない心理状態」のことで、活用すると顧客を深く理解できるため、新規顧客の獲得や競合他社との差別化につながります。

 

顧客インサイトの重要性を表すものとして、「もし顧客に彼らの望むものを聞いていたら、彼らは『もっと速い馬がほしい』と答えていただろう」という言葉があります。
これは、世界で初めて自動車の大量生産を実現したヘンリー・フォードの言葉です。
人々の移動手段が馬だった時代に、消費者が欲しいものではなく、「速く移動したい」という消費者の悩みに対する解決手段として自動車を製造し、自動車王となりました。

 

このように、顧客インサイトを上手に活用すると、既存の集客やマーケティングに活かせるだけでなく新たな市場の開拓につながります。
本記事では、顧客インサイトの重要性や顧客インサイトを把握する方法を解説します。
顧客インサイトを活用してマーケティングに活かしたいとお考えの方は、ぜひ最後までご覧ください。

顧客インサイトとは

顧客インサイトとは、顧客自身も気づいていない心理状態のことです。
顧客インサイトを捉えたマーケティング施策をとることで、顧客の本質的な問題の解決に対して訴求できるため、購買意欲を高められます。

たとえば「新しい掃除機がほしい」という欲求の裏には「部屋を清潔な状態に保ちたい」といった顧客インサイトが考えられます。この場合、掃除機よりも空気清浄機こそが、顧客が本当に求めているものかもしれません。

家電量販店やアパレルショップなどの小売店で働く従業員は、顧客とのセールストークのなかで顧客が気づいていないニーズを掴み、顧客にとって最適な商品の提案に役立てています。

このように表層的な顧客の欲求ではなく、その裏に隠された顧客自身も気づいていない心理状態である顧客インサイトをくみ取ることで、競合他社に負けない魅力的な商品やサービスの開発が可能です。

顧客インサイトとニーズの違い

ニーズとは、顧客が求めているもののことで「顕在ニーズ」と「潜在ニーズ」に分けられます。特に、潜在ニーズは顧客自身が把握していない欲求のことで、顧客インサイトとよく似ています。

わかりやすくするために、具体例を交えて、それぞれの違いをまとめました。

項目概要具体例
顕在ニーズ顧客自身が自覚している欲求・小腹が空いた時にプロテインドリンクが飲みたい
潜在ニーズ顧客自身が自覚していない欲求・筋肉量を増やしたい
・引き締まった体を手に入れたい
顧客インサイト顧客自身が自覚していない心理状態・自分に自信を持ちたい
・運動を習慣化したい

顧客インサイトと潜在ニーズは「顧客自身が自覚していない」という点で共通していますが、顧客インサイトは潜在ニーズをさらに深掘りした深層心理に存在します。

潜在ニーズを導き出すのも困難ですが、顧客インサイトはさらに難しく、一方で顧客インサイトをつかめれば画期的な商品やサービスの開発も可能です。

顧客インサイトの重要性

顧客インサイトが重要とされる理由は、下記のとおりです。

  1. 新しい需要を作り出せる
  2. 深い顧客理解が可能
  3. 競合他社と差別化できる
  4. 認知拡大につながる

顧客インサイトを捉えた商品やサービスは、ターゲット層に共感・拡散されやすく、認知拡大につながります。

重要性1:新しい需要を作り出せる

顧客インサイトを見つけ出すことで、新しい需要を開拓できます。
現代社会は、さまざまな商品やサービスであふれかえり、その中から自社の商品やサービスを選んでもらうのは大変です。激しい競争に勝ち抜くには、従来通りの開発では消耗しかねません。
しかし、顧客インサイトを把握できれば、今までにない新たな需要を満たす商品やサービスを開発でき、競合のいない市場の開拓も可能です。さらに、既存の商品やサービスも訴求方法の見直しや改善につながり、今まで冷え込んでいた市場の活性化も期待できます。

実際に、大手家電メーカーは食器洗い乾燥機を「家事を楽にする」というコンセプトで売り出していましたが売れ行きは伸びませんでした。
調査をおこなったところ「家事を楽にすることは、子育ての手を抜いている」と罪悪感を持っているという顧客インサイトを見つけました。そこで「子どもと一緒にいられる時間を増やす」といった子育てのメリットを訴求したことで売上アップに成功したといいます。
このように新しい体験や価値を顧客へ届けられれば、売上へ大きく貢献できます。

重要性2:深い顧客理解が可能

顧客インサイトを把握することで顧客を深く理解でき、今までにないアプローチが可能となります。現代の数ある商品やサービスから自社を選んでもらうためには、顧客が求めるものを世に出さなければなりません。

しかし、顧客ニーズを狙った商品やサービスはすでに多く存在しているため、今から世に出すものは顧客に新しい体験や価値を提供する必要があります。また、同じ商品やサービスを利用して得られる体験や価値は、顧客によってさまざまです。それぞれの顧客理解を深めることで、より的確な商品やサービスの開発につながります。

重要性3:競合他社と差別化できる

顧客インサイトをつかむことで、競合他社と差別化でき、競合のいないブルーオーシャンで戦略を展開できます。顧客インサイトは顧客自身も気づいていない心理状態で、簡単に把握できるものではありません。つまり、競合他社も把握しきれていない可能性が高いです。

さまざまな商品やサービスがある現代で、競合他社との差別化は難しくなっています。しかし、そのような顧客インサイトを活用して新しい商品やサービスを開発すると、競合他社と差別化が可能です。

重要性4:認知拡大につながる

顧客インサイトをマーケティングに活用することで、認知拡大を図れます。
顧客インサイトを捉えた商品やサービスは、今まで自覚していなかった顧客にピンポイントで刺さり共感され、SNSで拡散されたりTVで取り上げられたりと大きな話題を呼びやすいです。SNSの口コミ拡散はユーザー間で忌憚のない意見が広がり、いわゆるバズが発生すると爆発的な認知拡大につながります。

顧客インサイトを把握する3つの方法

顧客インサイトを把握する方法は、下記のとおりです。

  • データを収集する
  • 収集したデータを分析する
  • 柔軟な視点で見つける

データの収集と分析はもちろん、柔軟な視点を持つことが重要です。柔軟な視点については、さらに5つに細分化できるためそれぞれを簡単に解説します。順番に見ていきましょう。

方法1:データを収集する

顧客インサイトを把握するために、まずはデータを収集しなければなりません。顧客インサイトは担当者の想像で生み出せるものではなく、事実をもとにした分析が重要です。データを収集する方法はたくさんありますが、代表的なものを紹介します。

  • アンケート
  • インタビュー
  • ソーシャルリスニング
  • システム・ツールの利用

特に、インタビューにはグループインタビューやデプスインタビューなどの形式があり、状況に応じてどの形式を使用するか使い分けることが重要です。また、データの収集と言えば上記のように新しく収集するイメージを持つ人が多いですが、もともと社内にあるデータの整理も欠かせません。

方法2:収集したデータを分析する

データを収集したあとは、分析をおこないましょう。アンケートやインタビューで収集したデータは、定量データと定性データに分けて分析します。たとえば、インタビューで得られた定性データは、対象者の属性で分けると傾向が見える場合もあります。

分析データを使い、ペルソナを設定しましょう。ペルソナを設定することで、ターゲット像が見える化され、戦略的に商品やサービスの開発・改善を進められます。またペルソナを設定したあとは、感情や行動を理解するための共感マップを作成します。例えば下記のようなものです。

  • 見ているもの
  • 聞いていること
  • 考えていること、感じていること
  • 言っていること、行動
  • 痛みやストレス
  • 得られるもの、欲しいもの

共感マップから顧客の課題や解決策の確認が重要です。顧客の課題や解決策などをイメージできれば、さらに顧客に刺さる商品やサービスの開発、マーケティングが実施できます。

方法3:柔軟な視点で見つける

顧客インサイトを把握するためには、固定観念にとらわれず柔軟な視点が欠かせません。
具体的な方法は、下記のとおりです。

  • 目的と手段を確認する
  • 現象から原因を探る
  • ネガティブとポジティブの関連性を確認する
  • 顧客行動の矛盾点を見つける
  • 普遍的な欲求から考える

データを収集すると、必ずネガティブな意見とポジティブな意見が集まります。
ここで重要なポイントは、ポジティブな意見ばかり注目するのではなく、ネガティブな意見も重視することです。詳しく見ていきましょう。

1:目的と手段を確認する

マーケティングでは、顧客のとる手段に注目しがちですが、実際はその手段をとった目的も確認する必要があります。目的と手段は、それぞれ「悩み」と「解決策」と言い換えてもいいでしょう。つまり、顧客の選んだ解決策だけではなく、根本的に抱える悩みに注目しなければなりません。

たとえば、同じVODのサブスクリプションサービスに加入した人でも、目的は「安い料金で楽しみたい人」と「豊富なラインナップを楽しみたい人」がいます。サービスのコンセプトを安い料金にするのか、豊富なラインナップにするのかで訴求できるターゲットは異なります。このように手段だけではなく目的も確認することで、顧客インサイトの発見が可能です。

2:現象から原因を探る

顧客行動において目に見える部分やアンケート・インタビューで聞き出せる部分は、あくまでも現象に過ぎません。現象ばかりを見ていると顧客インサイトはつかみづらいので、その現象に至った原因を把握することが重要です。

たとえば、あるサービスの売れ行きが悪く、なぜ利用しないのかアンケートをとったところ「料金が高いから」という理由がもっとも多かったとします。しかし、そのサービスのランディングページ(LP)で特徴をしっかりと訴求できていなければ、本来は妥当な料金でも割高感を与えてしまうのです。

したがって、この場合は「料金が高くてサービスを利用しない」という現象に対して「サービスの説明不足」という原因が考えられます。この場合、LPを制作し直すことでサービス利用率の改善が期待できます。

3:ネガティブとポジティブの関連性を確認する

物事にはネガティブな面とポジティブな面があり、どちらかだけを見ていては本質を理解できません。当然ながら商品やサービスにも両面があり、アンケートやインタビューにおける顧客の回答も同様です。ネガティブな面は改善したり、別の意味づけをおこなったりしてポジティブな面に変換する必要があります。

たとえば「味はおいしいけど値段が高い」食品がある場合、安易に値下げをするのではなく、パッケージやマーケティング施策を高級感あふれるものにすることでプレミアム感を演出できます。「値段が高い」というネガティブなイメージを「高級感」というポジティブなイメージに変換するケースです。このようにネガティブな面に、顧客インサイトを見つけ出すヒントが隠れている場合もあります。

4:顧客行動の矛盾点を見つける

顧客行動の矛盾を見つけることで、顧客インサイトを見つけるヒントになる場合もあります。顧客の購買行動は、いつも理にかなっているわけではありません。

たとえば「機能が豊富だから購入する」「使いやすいから購入する」は理にかなっている購買行動ですが、なかには「高カロリー食品が健康に良くないとわかっていても、おいしいから食べる」といったニーズもあります。健康に気を遣う必要があると感じつつも、高カロリー食品を食べる背徳感で満足感を得られるのです。
このような顧客の矛盾に着目することで、新たな顧客インサイトの発見を期待できます。

5:普遍的な欲求から考える

さまざまな観点を紹介しましたが、人間の根底にある基本的な欲求も忘れてはなりません。
人間には根本的な欲求があるため、どのような世の中にあってもそれらが顧客インサイトとして根底にある場合が多いです。たとえば、食欲や睡眠欲を始めとするそれらの欲求は、人の心理に強く影響しています。根本的な欲求を満たすという顧客インサイトに注目することで、自社の商品やサービスを開発したり改善したりできます。

顧客インサイトの活用方法と3つの注意点

顧客インサイトを活用するためには、下記の点に注意しなければなりません。

  • 顧客インサイトを活用するために周囲の理解が必要
  • 顧客インサイトは確認しづらい
  • ブランドイメージを損なう恐れがある

注意点1:顧客インサイトを活用するために周囲の理解が必要

顧客インサイトを把握し、商品やサービスの開発やマーケティング施策を実施する際は、上長の承認が必要です。そのためには上長を納得させるだけのエビデンスが必要ですが、顧客インサイトは顧客自身も自覚していない心理状態のため、立証が簡単ではありません。
企業としても予算を割くためには、確実性の高い施策に投資したいものです。そのため、事実に基づくデータを分析し、上長を説得できるだけの材料を揃えておかなくてはなりません。少なくとも考えられる反証を用意し、すぐさま回答できる状態にするのが望ましいです。論理的な証明ができるように心がけましょう。

注意点2:顧客インサイトは確認しづらい

顧客インサイトは可視化できないため、明確な確認が困難です。顧客インサイトを確認しづらい場合は、フレームワークを活用してどの程度理解できているのかチェックしてみましょう。フレームワークを活用すると関連する従業員間で共通の基準を持てるので、確認しづらい顧客インサイトを分析しやすくなります。
フレームワークを活用する場合は、共感マップやカスタマージャーニーマップがおすすめです。

注意点3:ブランドイメージを損なう恐れがある

顧客インサイトを活用することは重要ですが、あまりにもストレートな訴求をしたり、ユーザーの不安を煽ったりすると企業のブランドイメージを損なう恐れがあります。顧客インサイトは顧客にとって問題解決に直結する内容かもしれませんが、デリケートな悩みに対して訴求する可能性があるため、注意が必要です。
たとえば肥満や薄毛などのコンプレックスに関連する場合は、特に注意しなければなりません。また、必要以上に不安をあおるような訴求は、一時的な効果を得られても長期的にはブランドイメージの悪化による顧客離れにつながる恐れがあります。
そのため、目先の効果にばかりとらわれるのではなく、顧客インサイトを訴求することがブランディング戦略の妨げとならないか確認しましょう。

まとめ

顧客が自覚していないという点では潜在ニーズと似ていますが、顧客インサイトは潜在ニーズをさらに深掘りした深層にあります。そのため、顧客インサイトを把握することは困難で、上手に掴めれば新しい需要を作り出せたり、競合他社と差別化できたりします。

顧客インサイトを把握するためには、データの収集・分析はもちろん、柔軟な視点から顧客の行動を確認しなければなりません。顧客インサイトは可視化できないので施策につなげるのは難しいですが、的確な顧客インサイトはマーケティングにおいて大きな効果を発揮します。
積極的に顧客インサイトの把握に努め、画期的な施策により売上向上を目指しましょう。

この記事の著者

大里 紀雄Norio Osato

Micoworks株式会社

ビジネスマーケティング部 Director

大手Web制作会社にてチーフデータアナリストとして、DMPの構築および活用支援、広告運用の業務に従事。マルケトではシニアビジネスコンサルタントとして業種業界を問わず、大手企業から中小企業まで、MAツールの導入や戦略構築支援を行う。 その後、複数の事業会社で大規模カンファレンスの企画運営や、オウンドメディアの構築などのマネジメント、アジアパシフィック地域のマーケティング戦略立案や広報活動など幅広い業務を経験し、現在に至る。

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